「人権方針」の作り方


 こんにちは。冨旺経営支援事務所の冨田です。

 令和4年(2022年)9月に日本政府によって策定された「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(以下、ガイドラインという)」をご存じですか?

 企業に求められる人権尊重の取り組みについて解説しその取り組みを促進する事を目的に策定されています。前回、【「人権尊重」は中小企業の人手不足解消に必須】をテーマにガイドラインについて言及しました。

 本記事では、ガイドラインにある「人権方針」の作り方について解説します。

 まるとみ中小企業支援所では「人権方針の策定方法」や「従業員教育」「採用活動支援」「補助金申請」「経営相談」など中小企業の皆さまの様々な課題解決のお手伝いをしています。初回は無料相談を承りますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡下さい。

人権方針とは

 人権方針とは、企業が「その人権尊重責任を果たす」という約束を企業の内外ステークホルダーに向けて明確に示すものです。

 近年、コーポレートサイト(ホームぺージ)等にも「人権方針」のページを設けている企業が増えてきました。

人権方針の要件

 ガイドラインでは、人権方針策定に伴う要件として、以下の5つを定めています。

  • 企業のトップを含む経営陣で承認されていること
  • 企業内外の専門的な情報・知見を参照した上で作成されていること
  • 従業員、取引先、及び企業の事業、製品又はサービスに直接関わる他の関係者に対する人権尊重への企業の期待が明記されていること
  • 一般に公開されており、全ての従業員、取引先及び他の関係者にむけて社内外にわたり周知されていること
  • 企業全体に人権方針を定着させるために必要な事業方針及び手続に人権方針が反映されていること

 つまり、付け焼き刃的な人権方針の策定はダメですよということになります。

人権方針策定の留意点

 人権方針策定の留意点としてまず挙げられることは、以下の➀と➁を社内外から情報収集し、検討する必要がある点です。

➀ 「負の影響」を受ける可能性がある利害関係者が誰なのか

➁ ➀の関係者が、事業にどのように関係するのか

 人権方針は、企業の経営理念と密接に関わるものであるため、経営陣が承認し、人権方針と経営理念との一貫性を保つことが必要です。

人権方針の策定方法

 具体的にどのような手順で人権方針を策定すればよいかについて解説します。

人権方針の策定方法について

人権方針への記載項目例

人権方針の策定手順はわかりましたが、どのような項目を記載すればよいのでしょうか。経済産業省では、以下5つの項目を記載例として挙げています。

1.位置づけ

  • 人権方針が、自社においてどのような文章であるのかを明確に記載する
  • 人権方針は、人権尊重の取組について企業の考えを示すもので、「経営理念」や「行動指針」との一貫性を保たなければなないため、「経営理念」「行動指針」等との関係性について記載する

2.適用範囲

  • 自社だけでなく、自社が支配権を有する他の企業にも適用される可能性があるため適用範囲を明確にする
  • グループ会社にも適用する場合はグループ会社の定義を明記する

3.期待の明示

  • 従業員を含む関係者に対する人権尊重への期待を明示

4.コミットメント(約束)の表明

  • 国際的に認められた人権を尊重する旨のコミットメント(約束)を表明する
  • 具体的には、「国際人権章典で表明されたもの」「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」に挙げられた基本的権利に関する原則等の支持・尊重を記載する
  • 「国連指導原則」「OECD多国籍企業行動指針」等の国際文書への支持の記載
  • 自社の活動に関連する国際文書への支持を記載する

5.人権尊重責任と法令遵守の関係

 例えば、外国人人材を雇用する際、当然に各国の法令で認められた権利や自由を侵害してはならず、法令を遵守しなければなりません。インドネシア、ベトナム国籍の従業員がいる場合は、当然に各国の法令で認められた権利や自由を侵害してはならないのです。

  • 国際的に認められた人権を可能な限り最大限尊重する方法を追求する観点を記載する

 例えば、外国人労働者がいる場合、闇雲に自社ルールや日本流を押し付けていないでしょうか?郷に入っては郷に従えという考え方は否定しませんが、彼らには彼らの国の文化や価値観があります。それらを尊重した上で、自社のルールに理解を示してもらえるよう、伝え方を考える必要があります。

 また、各国の休日にも理解を示し、日本の休日だけを押し付けないようにする必要もございます。「各国の法令で認められた権利や自由を侵害してはならない」というのはそのような配慮も含まれていると考えます。

6.自社における重点課題

  • 自社が影響を与える可能性がある人権に焦点を当てた取り組みを行う内容を記載

 ※脆弱な立場に置かれることの多い個人はより深刻な人権侵害リスクを受けやすいため、特別な注意を払う必要がある。(例:外国人、女性、子供、障がい者、先住民族、民族的又は種族的・宗教的・言語的少数者)

7.人権尊重の取組を実践する方法

  • 人権方針をどのように実現していくかを記載する
  • 具体的には、「人権デュー・ディリジェンスの実施」「救済方針」「ステークホルダーとの対話の実施」を明記
  • 人権方針の実施状況を監督する「責任者の配置」「責任内容」を記載

人権方針の定期的な見直し

 人権方針は、策定・公表することが目的ではありません。

 企業全体に定着させること、企業活動の中で人権方針を実践していく必要があります。そのため、自社の事業状況や社会状況等の変化が生じた際は、柔軟に対応し、「定期的な人権方針の見直し」を行うことが非常に重要です。

 

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